傷病手当金と障害年金の併給について【社労士が解説】
こんにちは、堺社労士事務所の阪本 晋亮です。
今回は、障害年金と傷病手当金の併給は可能なのかについてご説明します。
結論から申し上げますと、支給期間が重複した場合、両方の制度から満額を受け取ることはできません。
場合によっては、支給額の調整や傷病手当金の返納が発生するケースもあります。
今回、特に知っていただきたいポイントは次の3点です。
ポイント
➀障害厚生年金と傷病手当金を同時に満額受給することはできません。
➁傷病手当金の返納が必要となるケースがあります。
➂傷病手当金を受給している最中であっても、障害年金の申請を始めた方がいいケースがあります。
ご理解いただけるように徹底解説いたしますので、障害年金の申請についてお悩みの方は、ぜひご一読ください。
目次 【ポイント1】障害厚生年金と傷病手当金を同時に満額受給することはできません。 |
そもそも傷病手当金とは
3つのポイントを解説する前に、傷病手当金についてご説明します。
傷病手当金とは、病気やケガなどの療養のために労務不能となった場合に、労務不能となった日ごとに支給される手当金です。
目安として、1日当たりの支給額は、給料(月給)の3分の2程度の額を30で割った額となります。
受給できる期間は、支給期間を通算して1年6か月です。
支給を受けるには、ご本人が協会けんぽか健康保険組合に被保険者として加入している必要があります。
【ポイント1】障害厚生年金と傷病手当金を同時に満額受給することはできません。
同じ支給理由による障害厚生年金と傷病手当金の支給対象期間が重複している場合、それぞれから同時に満額の支給を受けることはできません。
傷病手当金の支給を受けている方が、障害厚生年金の支給を受けた場合、傷病手当金は支給されません。
ただし、支給された障害厚生年金の額が傷病手当金の額より少なければ、傷病手当金の額から障害厚生年金の額を差し引いた差額が傷病手当金として支給されます。
【ポイント2】傷病手当金の返納が必要となるケースがあります。
障害厚生年金をさかのぼって受給するケースでは、その期間に同じ支給理由による傷病手当金の支給を受けていた場合、傷病手当金の返納が必要となる可能性があります。
【ポイント3】傷病手当金を受給している最中であっても、障害年金の申請を始めた方がいいケースがあります。
厚生年金の加入期間中に病気やケガで療養することになった場合、先に傷病手当金の申請をして、後日障害認定日(注1)をむかえてから障害年金の請求を考えるというケースが多いでしょう。
※(注1)「障害認定日」とは、原則として、その障害の原因となった病気やけがについて初めて病院を受診した日から1年6カ月を過ぎた日のことです。障害年金は障害認定日以降に申請をすることができます。
傷病手当金の支給を受けているということは、「療養のため労務不能」な状態であるということです。
したがって、障害年金の3級以上に該当する可能性があります。
傷病手当金の支給を受けている最中に、同時に障害年金を申請する要件を満たしている場合には、特別な理由がなければ、傷病手当金の支給期間が終わる前に障害年金の申請手続きを始めることも検討しましょう。
障害年金の申請手続きを開始から実際に支給が決定し、ご自身の口座に年金が入金されるまでには、少なくとも6カ月は見ておいた方が良いでしょう。
障害年金の支給が開始されるまでは傷病手当金を受け取れていた方が経済的にも安心できます。
最後に
現在、傷病手当金の支給を受けている方で、今後の生活や労働に不安がある方は、ぜひ一度当社へご相談下さい。
おひとりおひとりに寄り添った具体的なアドバイスをさせていただきます。