【2024年版】障害年金の遡及請求(遡り)とは?成功率や申請の注意点を社労士が解説!
みなさん、こんにちは。堺社労士事務所の阪本 晋亮です。
障害年金の遡及制度について徹底解説いたします。
遡及請求とはどういった制度なのか?
自分は遡及請求ができるのか?
遡及請求は難しいのか?成功しやすいのかどうかについてお伝えいたします。
遡及請求について不明点がある方、遡及請求をするべきか悩んでいる方のお悩みが解決できると思いますので、ぜひご参考ください。
Contents
障害年金とは
障害年金とは、病気やケガなどで、日常生活に支障があったり、今まで通りに働くことが難しくなった場合などに、一定の条件を満たしていればもらうことができる公的な制度です。
視覚・聴覚・手足の不自由だけでなく、がんや高血圧、糖尿病による合併症や心疾患、うつや統合失調症などの精神疾患など、数多くの病気やケガが対象とされています。
しかし障害年金は、書類の書き方一つで障害の等級が下がったり、支給してもらえなかったりすることも多くあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
障害年金を申請できるタイミング
障害年金の申請は原則的に初診日から1年6か月(認定日)を経過していれば申請することができます。
病気によって特例はありますが、初診日から1年6か月経過した日に診断書を書いてもらえれば、最速で申請ができます。
認定日の特例
以下の傷病・治療法に該当する場合は特例として、通常よりも認定日までの期間が短くなります。
傷病・治療法 |
認定日 |
人工透析療法 |
透析開始から起算して3か月経過した日 |
人工骨頭・人工関節 |
挿入置換した日 |
心臓ペースメーカー・植込み型除細動器(ICD)・人工弁 |
装着した日 |
人工肛門造設・尿路変更術 |
総設日・手術日から起算して6か月経過した日 |
新膀胱造設 |
造設した日 |
切断または離断による肢体の障害 |
切断または離断した日(障害年金手当金の場合は創面治癒日) |
咽頭全摘出 |
全摘出した日 |
在宅酸素療法 |
在宅酸素療法を開始した日 |
遡及請求とは
障害年金の申請方法は、3種類に分けられます。遡及請求はそのうちの障害認定日の時点にさかのぼって請求する方法のことです。
①認定日請求(本来請求)
障害認定日の時点で障害等級に該当するかどうか審査してもらう請求を「認定日請求(本来請求)」といいます。
障害認定日※とは初診日から1年6ヵ月経過した日をいいます。
※初診日から1年6ヵ月以内に傷病が治った(症状固定した)場合は、その治った日が障害認定となる特例あり。
②遡及請求
障害認定日に障害等級に該当していたけれど、障害年金のことを知らずに当時は請求していなかったという人などは、障害認定日の時点にさかのぼって請求することができます。
これを「遡及請求」といいます。遡及請求は必ず「障害認定日」にさかのぼって請求します。
1番症状が悪かった任意の時期にさかのぼって請求することはできません。
また、障害認定日が5年以上前でも、さかのぼって受給できるのは時効により5年分のみです。
③事後重症請求
障害認定日の時点では症状が軽く障害の状態に該当しなくても、あとから障害等級に該当する程度の症状になった場合、該当するようになったときに請求することができます。
これを事後重症請求といいます。ただし、事後重症請求は65歳までにしなければなりません。
遡及請求をするためのポイント
遡及請求が自分はできるのか気になる方は、以下の3ポイントをクリアできれば請求できる可能性が高いので参考にしてください。
①認定日から3ヵ月以内の診断書と現在の診断書の2枚を提出
②その診断書の内容がそれぞれの障害認定基準を満たしている
③保険料納付要件を満たしている
→保険料納付要件について詳しくはコチラで解説しております。
「障害年金をもらうための条件」
すぐ申請した方がよいのか
自分が遡及請求をする条件が整っているかわかったところで、ではいったいいつごろ遡及請求をするべきかお悩みかもしれません。
結論は、「なるべく早く遡及請求は行った方がよい」です。
理由は2つあります。
①カルテが処分されてしまう可能性があるから
カルテ保管の義務期間は医師法により5年となっています。
そのため診断書を依頼しても「カルテは廃棄したので診断書を書くことが出来ない」と断られてしまうケースや、病院自体が廃院されしまい診断書を取得することができないことがあります。
②当時の医師が退職・転院してしまっている
遡及請求の診断書は当時受診した医師がいらっしゃれば書いてもらえる可能性がありますが、大きな病院ほど当時の医師がいないことがあります。
その場合には、当時の診断書の作成を断られる場合もあり得ますし、今の医師が当時のカルテを参考に書くという場合があります。
しかし、カルテの保管義務期間の5年以上前となると当時のカルテがない、たとえあったとしても当時の状況が正確に反映された診断書とはならない可能性もあります。
③障害認定日が5年以上前であれば、遡及分が時効でどんどん消えて行ってしまう
遡及請求は5年以上前の分は請求することができません。
遡及請求のルールでは審査の結果、認定日での請求が認めれられた場合には1回目の振り込みの際に、過去の年金額がまとめて支給されることになっています。
しかし、時効によって5年以上前の年金の請求権は消えてしまうので、仮に10年前の申請が認めれたとしても、遡及分の年金を支払ってもらえるのは5年分のみとなってしまうのです。
遡及請求の成功率
遡及請求がどのくらい成功しやすいのか・難しいものなのか気になっている方もいらっしゃるかと思います。
遡及請求の成功率の高さは傷病によって変わってきます。どんな傷病だと受給しやすいのか解説します。
【成功率が比較的高い傷病】
人工関節や脳梗塞、ペースメーカーなどの傷病は、いつ症状が固定したか証明する「障害認定日」が認められやすいため、遡及請求が成功しやすい傾向があります。
精神疾患の方は、通院歴が長い場合や、就労されていないと比較的成功しやすいです。
【成功率が比較的低い傷病】
糖尿病など病状が徐々に進行する傷病は、障害認定日を証明しづらいため、遡及請求が難しい場合があります。
・糖尿病は初診日の証明が困難
・精神疾患は認定日から現在までの間に働けている期間があると難しい場合がある
ただし、病状によって状況がかなり変わりますので、まずはご相談ください。
遡及請求が難しいケース
遡及請求で受給が難しいケースとして以下のパターンがあります。
①かかりつけ医がおらず、複数の病院で受診をしている場合
複数の病院で受診をしている場合、初診日の証明が難しいことがあり、遡及請求の申請が困難になることがあります。
②初診日が5年以上前の方
ご自身の病歴を発症当時から覚えている方は少ないのが現実です。発病から初診までの状況、当時の行動範囲などを詳しく聞き、証拠の残っている可能性がある場所を探していくことが必要になります。
実は初診日の証明は受診状況等証明書(初診日を証明する書類)を出せなくても、それに代わる資料が見つかれば申請できることがあります。
③事後重症で請求し受給済み(認定日請求はしていない)となってから、5年以上経過している場合
5年以上経過してしまうとカルテの保管期間をこえてしまうため、請求が難しい場合があります。
④障害認定日の診断書が取得できない方(通院をしていない方)
遡及請求は通常3か月以内の診断書が必要となります。
この場合には認定日前後(認定日の3か月以内を除く直前と直後)の2枚の診断書を作成することで請求ができる場合があります。
詳しくは当事務所にご相談ください。
障害年金で遡及請求が成功すると扶養から外れてしまうのか?
遡及請求が成功すると、過去の年金を一度に受け取ることになるので、扶養に入れなくなるのでは?と思う方もおられるのではないでしょうか。
一般的に「扶養」と呼ばれるものには、所得税・健康保険・国民年金が含まれますので、順にご説明します。
所得税
障害年金は非課税所得になりますので、税金はかかりません。
したがって確定申告等も必要ありません。
健康保険と国民年金
健康保険と国民年金については一定の要件を満たすことにより、被保険者の扶養に入ることができます。
健康保険では被扶養者、国民年金では第3号被保険者といいます。
扶養に入るためには、扶養される方に年間収入の基準があります。
たとえば、60歳未満で被保険者と同一世帯の場合では、以下の①、②の両方を満たす必要があります。
①130万円未満
扶養される方が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は、「180万円未満」と読み替えます。
②被保険者の年収の1/2未満
つまり、障害年金の年額が180万円以上の方は、扶養に入ることができなくなります。
では、遡及請求が認められた場合、たとえば障害年金の年額が120万円だと、5年分で600万円を一時金で受け取ることになります。そうすると、年額は180万円未満でも、その年に振り込まれる額は180万円以上になっています。
この場合はどうでしょうか?
扶養の基準となる年間収入とは、「現時点から将来1年間の収入」のことをいいます。
さかのぼって受給した障害年金は一時金であり、将来も続く収入ではありませんので、この年間収入にはカウントされません。
したがって、扶養に入ることができます。(他の要件は全て満たすものとします。)
障害年金の年額が180万円以上の場合は、その方は扶養に入れませんので、ご自身で国民健康保険と国民年金に加入していただく必要があります。
国民健康保険と国民年金の免除制度について
国民健康保険には、障害者の免除制度はありませんが、障害年金は非課税所得ですので、所得額が少なければ国民健康保険料は少なくなります。
一方、国民年金には、障害等級2級以上の方を対象に「法定免除制度」があります。
法定免除制度では年金保険料を支払う義務がなくなり、全額免除されます。
法定免除を受けるためには役所での手続きが必要です。
デメリットとして、法定免除の期間は将来の老齢年金額に半額として計算されるため、老齢年金を満額もらうことはできなくなります。
将来、障害状態が軽くなる等の理由で障害年金ではなく老齢年金を受給する可能性がある方は、法定免除期間中の年金保険料を支払うことも可能ですので、ご検討いただく必要があります。
当事務所の遡及請求事例
ご相談にいらした状況
学校を卒業後、会社に就職。2年ほど仕事を続けていましたが、仕事上のストレスや人間関係から体調を崩し休むようになったとのことでした。
また、仕事を憶えるにつれ、周りからも期待されるようになり、それに答えないといけないと感じ、今以上に頑張って働くようになり、それがプレッシャーになり精神的にもきつくなってきたとのことでした。
徐々に眠れない日が多くなり憂鬱気分、頭痛や腹痛が続くようになると、起床時に体が動かなくなり、様子がおかしいことから、家族が精神科の病院に連れて行ったとのことでした。
うつ病と診断され、ドクターストップとなり仕事は休職となりました。
1年後復職しましたが、すぐに症状が悪化し、仕事は退職となりました。
今後の生活について不安を感じていたところ障害年金のことを知り、無料相談に参加されました。
社労士阪本による見解
うつ状態が重く希死念慮もあり、自閉的な生活となっていたことから、医師から就労支援施設Å型での就労を勧められ就労していました。
障害年金は、就労が可能な状態ですと受給が難しくなるのですが、ガイドラインによれば、「就労系障害福祉サービス(就労継続支援Å型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級を検討する。就労移行支援についても同様とする」となっています。
就労支援施設は、福祉的な役割が大きく、一般就労と分けて判断するということになります。
そのため、一般就労か就労支援施設での就労なのかを診断書に反映してもらう必要があります。
受任から申請までに行ったこと
就労支援施設A型で就労していましたが、施設からの多くの援助の元で就労していましたので、当該施設での援助の状況等をヒアリングし資料としてまとめ、医師に診断書を書く際の参考資料としてお渡ししました。
結果
障害厚生年金2級が決定し、2年遡及も認められました。
精神疾患の場合、就労していると受給が難しくなりますが、就労といっても一般就労なのか、就労支援や障害者雇用なのか様々です。
就労している場合、当該項目は審査に影響を与える重要な項目となりますので、注意が必要です。
そういったことからも専門家である社会保険労務士への相談をお勧めします。
他にも当事務所では遡及請求に成功した事例が多くございます。
また、無料相談を受け付けております。遡及請求に関してご質問や相談されたい方は、
お気軽にお申込みください。